社会 人的資本経営

ヤマシタは2030年に向けた長期ビジョン「EX→CXを強みに非連続成長へ」を掲げ、従業員の仕事のやりがい(EX)と顧客の感動体験(CX)を相互に高め合いながら、非連続な成長を実現する基盤作りに取り組んでいます。さらに、介護用品レンタルを行うホームケア事業においては、デジタルを活用した新規ビジネスを生み出し、CXの拡張を狙います。このCXの拡張を見据えて、優秀な人財を社内外から登用していき、非連続な成長を実現していきます。

人的資本経営の図

人財戦略

EX(仕事のやりがい)から考える人財戦略

中期経営計画2022-2024では経営スローガンに「EXから考える」を据え、短期的な売上・利益よりも人財の成長支援・やりがい向上を優先する施策に注力しています。やりがいや働きがいを感じられる職場を作ることで、社員の自発性を促し、新しい挑戦に前向きになれる風土を醸成することが重要と考えています。会社の財産である人財を大切にすることは、組織力の一層の強化につながり、ひいては中長期的な経営目標の達成にも寄与するのです。

経営戦略を実現する人財戦略

ヤマシタでは、長期ビジョンを実現するための経営戦略を達成するためのバランスド・スコアカード(BSC)を使ったマネジメントストラクチャーを構築しています。これによって、財務、顧客、プロセス、そして人財を一貫したシナリオで戦略実現の連動性を高めています。また、この戦略を実現するためには、社員がやりがいをもって働けることが重要です。そのため、ブランディング、採用活動から退職まで社員の方がヤマシタと関わる旅(エンプロイー・ジャーニー)にもとづき、社員のやりがい(EX)を高める一貫した施策を提供します。

長期ビジョン2030の数値目標達成(HC事業本部)
視点 戦略マップ CSF(成功要因)​ KPI(達成指標)
財政の視点 既存事業売上
450億円
M&A売上
100億円
営業生産性
M&A売上
CAGR14.5%
(年平均成長率)
顧客の視点 利用者数
30万人
利用者増加数
年3万人
お客様の
ファン化
LTV
(ロングタームバリュー)
プロセスの視点 営業所数
120店舗
顧客設定
量・質
顧客接点チーム運営方法
(STP/3C)
CJM
(カスタマージャーニーマップ)
人材の視点 人材ポートフォリオ
社員数4000人
マネジメント
所長120人
採用/成長/昇給速度
組織パフォーマンス
EJM
(エンプロイジャーニーマップ)

人事制度

新人事制度の導入

企業理念を実現するために、社員一人ひとりはどのような行動をとるとよいのか、人財マネジメントの側面から具体化したものが人事制度であり、社員はこれを働き方の羅針盤として活用しています。具体的には、Visonを実現するための具体的な長期経営計画と連携し、単年度の組織目標を個人と連動させて業績評価とします。また、Valueと連携し、理念実現のための行動がどの程度発揮されているかを行動評価とします。この2つの評価を組み合わせてパフォーマンスに応じた報酬を決定します。

こうした考えのもと、2024年4月から「新人事制度」を導入しました。新制度では、等級種別を一本化することで社員がキャリアを描きやすい設計に変更しました。また、昇給・昇格の基準となる職務やスキルを明確化するとともに、昇格回数を年間最大4回に拡大しました。さらに、残業を前提としない働き方を浸透させるために、みなし残業制度を廃止しました。残業時間削減と本給アップを同時に達成することで、社員のワークライフバランス向上やモチベーションアップも目指します。

人事制度の図

公正な成長機会

社員の育成・成長の結果、ヤマシタでは、年に4回、昇進・昇格の機会を設けています。昇進・昇格は社員にとって人生の大きなチャンスであり、ターニングポイントにもなり得るものです。そのため、当社の評価制度は、公正性と社員の納得感を重視した仕組みとなっています。

具体的には、社員の評価は直属の上司だけではなく、ライン上の各上司が集まり意見交換をした上で決められます。複数で評価することによって、評価者によるばらつきを防ぎ公正な評価を可能にしています。また、社員には評価の点数やその理由が公開されます。

さらに、昇格するための具体的なテスト内容もオープンになっているため、社員は昇格に必要な業務上のスキルや課題を知り、昇格の機会をつかむことができます。このように、社員が安心して自分自身の成長と業務での成果に目を向け、積極的な活動ができるような環境を整えています。

人財育成

人財育成の考え方

ヤマシタでは「人材こそ会社の財産である」という考えから人材を「人財」と呼んでいます。企業理念「正しく生きる、豊かに生きる」を軸に、当社が掲げる「業界No.1への成長戦略」を支えるのは人財力です。環境変化のスピードが激しい今後の世の中において、人財力向上には4つのヤマシタ・バリュー(行動指針)を体現する自律的な社員が必要です。自律的な社員とは、自分や周囲の課題を自分事として捉え、課題解決のために自ら成長を目指し、行動で示す社員を指します。自律的な社員をサポートするマネジメント層や経営層の意識・振る舞いも重要です。

自律的な人財が集まる組織を創るため、常に自分の成長を求め、自らの役割を最大限に高めようとする社員には、会社は常にチャレンジングな環境を提供します。また、挑戦的な目標を達成できるように、自己研鑽を含めた成長環境を整備します。

現状の仕事の中で、誰かの役に立ちたいという思いを持ち、日々の業務を着実に実行しようとする社員には、上長からコミュニケーション、学習ツール、研修などによる育成環境を提供します。また、日々の自分の業務を効率化できるように、自己研鑽を含めた成長環境も整備します。

このように、すべての社員の人生が豊かになるように、成長をサポートしていきたいと考えています。私たちは、この育成方針が社員と会社の成長に寄与し、ひいては社会全体が正しい方向に発展すること、豊かになることにつながると確信しています。

各社員の状況に合わせた研修体系

私たちは人財こそが最大の企業資産と考え、中長期的な社員の能力開発、スキル向上、および組織能力向上に力を入れています。

すべての研修は「わかる」で終わるのではなく「できる」ようになるために事前の準備や事後の課題などを実践しています。新入社員、中堅社員、リーダー、マネージャーが各階層に応じた適切な研修を受けることで、社員は確実に成長を遂げることができます。

各社員の状況に合わせた研修体系の図

中途・新入社員研修

中途・新入社員研修の取り組みの一つとして、2021年度から新卒営業職が入社して独力で業務を行い戦力化するための期間を短縮する施策を実施しています。

2021年度は12ヵ月間で約8割のメンバーが一人立ちしていましたが、2022年度は10ヵ月で100%の方が一人立ちに成功。成長期間を約17%短縮でき、成長支援のためのサポート業務を削減することができました。

2023年度はさらに20%の期間短縮を行い、定着率を向上させることに成功しました。2024年度以降も同様に一人立ちまでの期間短縮を図り、長期ビジョン達成に向けた人材戦略に注力していきます。

こうした成長加速の取り組みは、介護用品をお使いいただく「感動体験」を早く提供できるようになることで、EX(Employee Experience)=仕事のやりがいを高めるとともに、会社としてお客様の獲得や売上の向上にもつながっています。

所長・リーダーの育成強化に注力

拠点数・メンバー数を拡大させながら、長期ビジョン実現を達成するためには、特に「①営業所の生産性向上」「②能力開発向上によるリーダー・所長の早期育成」の2点が求められます。そのため、人財戦略においては、生産性向上の施策の磨き込み、早期成長・昇格を支援する能力の向上をテーマに掲げています。

①営業所の生産性向上
営業所の売上・生産性を向上させることを目的に、3C/STPの能力を上げ、チーム運営方針を良品基準に沿って評価し、戦略と成長支援の連動性を高めることに注力します。

②能力開発向上によるリーダー・所長の早期育成
所長・リーダーの育成においては、2024年度から導入している新人事制度で定義した「スキル発揮」「コンピテンシーの能力開発を体系化すること」で早期成長・昇格を支援します。能力開発は、研修だけでなく、サイト、書籍、動画などによる自主学習、ガイドラインや型を使ったOJT、昇格審査などでの議論、フィードバックなどの総合的な取り組みを行います。メンバーの成長と所長・リーダーへの昇格を加速するためのポイントは、能力開発スキルの磨き込みです。特に、フィードバックおよび傾聴力の能力を上げ、能力開発の型を修得することが不可欠です。

働き方改革

DX推進で生産性向上を実現

ヤマシタでは経営戦略の一環としてDX推進による生産性向上にも取り組んでおり、着実に成果を上げています。生産性向上によって生まれた利益を社員に還元することで、EXを高めるという好循環を生み出すのが狙いです。具体的には、電子サインシステムの導入によって、全社の作業総時間月平均1,100時間の削減に結び付けました。また非IT部門によるシステム開発(市民開発)で多数の社内アプリを構築し、全国の営業所に展開しています。

エンゲージメント

組織風土調査

ヤマシタでは、2015年度より会社そのものの健康診断ともいえる組織風土調査を定期的に実施しています。この調査では、会社の理念や事業・仕事内容・制度待遇面などの全社的な領域から、直属上司との関係や職場状況など組織単位の領域にわたる64項目において社員の期待度と満足度を定点観測しながら、組織としての課題を認識しつつ絶えず改善活動につなげる指針としています。会社と社員との関係性を定期的に測ることが成長のために欠かせないプロセスと捉えています。この調査結果をもとに会社として、そして社員一人ひとりが自分ごとと考え、取り組んでいく全社的な活動として定着しています。

安全衛生

安全・衛生面の取り組みで働きやすい職場作り

「ヤマシタで働く皆さんの安全と健康を守ることは、すべてに優先する」を安全衛生基本方針に掲げ、①安全②品質③効率の優先順位を明確化し、安全衛生活動に全社で取り組んでいます。具体的には、労災事例をその発生状況に加え、直接原因と根本原因に分けて分析し、報告書として社内への公開を行うことで、同様のケースだけでなく、類似ケースの労災を防止する取り組みを徹底して継続しています。また、介護用品は重量物が多く、腰痛などの労災を防止するため、重量物取り扱いのガイドラインを策定し、周知活動を行っています。

車両事故防止の取り組み

ヤマシタでは、介護用品やリネン類の運搬のため、1000台以上の車両を使用しています。そうした中、車両事故ゼロの実現に向け、ドライバーが安心して働ける環境の整備に努めています。具体的には、新卒入社者向けの安全運転研修や、テレマティクスサービスを活用した危険運転行為の検知・指導を行っています。