超高齢化社会が急速に進む日本においては、高齢者の健康維持が大きな課題となっています。その中でも、深刻な問題が「転倒事故」と「誤嚥(ごえん)」です。
高齢者は転倒による骨折や頭部外傷などの大けがにつながりやすく、それが原因で死亡や要介護状態、寝たきりになることもあります。厚生労働省の調査によると、令和2年(2020年)における高齢者の「転倒・転落・墜落」の死亡者数は8,851人で、交通事故(2,199人)の約4倍です。また内閣府の「高齢社会白書」によると、介護が必要になった主な原因のうち、「骨折・転倒」(13.0%)は「認知症」(18.1%)、「脳血管疾患(脳卒中)」(15.0%)、「高齢による衰弱」(13.3%)に次いで4番に多くなっています。
また、食べ物や飲み物が喉頭や気管に入る「誤嚥」は、肺炎を引き起こす原因となるため高齢者にとっては特に注意が必要です。厚生労働省の調査によると、肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者であり、そのうち7割以上が誤嚥性肺炎です。肺炎は日本人の死因の中でも上位です。最も多いのが「がん」(24.6%)、次いで「心疾患」(14.8%)、「老衰」(11.4%)、「脳血管疾患」(6.9%)であり、「肺炎」(4.7%)、「誤嚥性肺炎」(3.6%)と続きます。
このようなデータからもわかるとおり、転倒事故・誤嚥による入院は、高齢者のADL(Activities of daily living:日常生活動作)の低下を招き、介護が必要となる大きな原因にもなっているのです。
そうした中、ヤマシタでは高齢者の転倒を減らすための取り組みとして、介護現場での歩行解析アプリ「トルト」の導入を進めています。トルトは5メートルの歩行をスマホで撮影するだけで身体機能を見える化できるアプリです。2〜3分のAI分析によって高齢者の状態を点数化できるので、客観的な評価や適切な運動提案が可能になり、利用者の納得感や改善意欲(運動継続)の向上にもつなげられます。
トルトの活用実績は2024年現在、累計撮影者数5万人および介護予防教室累計1,500回を達成。ヤマシタでは収集したお客様のデータをCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)に蓄積し、一元管理を進めています。
今後は厚生労働省などが調査している統計とヤマシタが独自に収集したデータを比較することで、トルトがどの程度転倒予防に効果を発揮しているかを定量的に計測していきます。加えて、データ活用とAI分析によって転倒が起こる原因を特定し、効果的な予防策の立案にもつなげていく考えです。